Bakewell にてベイクウェル・プディングを食べる

こちらの記事は以前お店のサイトにのせていたものです。
お店のお知らせの投稿に埋もれていってしまうので、こちらに移すことにしました。

2019年の夏にイギリスへ行った時の記録となっています。




今回の渡英の一番の目的は「Bakewell Pudding」を食べること。

ワーホリ中に行くことができなくて悔やんでいた事がやっと実現できました。
イングランド北部ダービーシャー、渓谷が美しいピーク・ディストリクトの東側にある町がベイクウェルです。

ぐるっと一周するのに一時間もかからない小さい町
この町の名物が Bakewell Pudding ベイクウェル・プディングです。

写真上部のホテルはベイクウェルプディングの歴史において大事な場所です。

しかしながら、同じベイクウェル出身でイギリス菓子として名が売れているのは、
”Bakewell Tart” の方ではないでしょうか。

スーパーに売っているベイクウェルタルトやケーキたち

ベイクウェルタルト、ベイクウェルケーキなどなど
ロンドンはもちろんイギリス全土どこでも手に入るイギリス人に愛されているお菓子です。
基本的にアーモンド粉入りの生地に、中に苺やラズベリーのジャムが入っています。
そう、これらのタイプのタルトやケーキはどこでも食べられるのです。

そして現地に行かねば食べられないのが、ベイクウェル・プディングです。

タルト?ケーキ?プディング??何が違うの?という感じですよね。
そのあたりも含めて、私が現地に行って体験してきた事を綴ってまいります。
長くなりますので、お時間のある時にお読みいただければ嬉しいです。



さて!
ベイクウェルプディングとは~という歴史的なものはwikiを参考にしていただきつつ、
菓子の歴史というものは諸説あるものでして、私が現地で買った歴史書にはこう書いてありました。

先程の写真のホテル “The Rutland Arms Hotel” がホテルではなくInnだった頃、
女主人のMrs.GreavesがウェイトレスのAnnさんにジャムプディングを作ってくるようにお願いしました。
しかしAnnさんは配合を間違えてしまって、ちょっと違うものができてしまい…
でもそれをお客様にそのままお出ししたら大喜び、怪我の功名、 Mrs.Greaves はそのレシピをしっかりメモしてInnの秘伝のプディングとして受け継がれていくという感じです。

そんな間違いから生まれたベイクウェル・プディング
現在は我こそが元祖!いや我々が本家!みたいな感じでベイクウェルプディングを名物として販売しているお店が何軒もあります。

ざっと町を歩いて私が見かけたお店は4軒。
4軒全てイートインするのは時間とお腹が足りないので、
宿泊したベイクウェルのB&Bのご主人にどこが一番美味しい?と聞いたら、
「The Old Original Bakewell Pudding Shop1択!」というお答えをいただいたので、
現地の人がそこまで言うのならば、まずは “The Old Original Bakewell Pudding Shop ” へ行ってきます。

The Old Original Bakewell Pudding Shop

深緑の看板にベイクウェルプディングの絵が書いてあります。

ショーウィンドウのベイクウェル・プディングとプディングベアちゃん

ショーウィンドウにはプディングはもちろん、焼きたてのパンやペイストリーがずらずらっと!美味しそう!

一階はテイクアウトとお土産スペース、奥には簡単なイートインスペースもありました。

2階はしっかりと食事のとれるレストランとなっています。
せっかくなのでこちらでプディングをいただきました。

The Old Original Bakewell Pudding Shop ’s Bakewell Pudding

事前調べで極甘という情報を見てしまい…
食べきれるか不安だったためスモールサイズを注文しました。

デザートには温かいカスタードまたはクリームの付け合せを選べます。

半分に割ってみました。
パイ生地がサックサクで、中は全体的に茶色くとろりとして濃厚なシロップのようです。
苺ジャムとアーモンドフィリングが混ざり合ってしまっています。

しかしながら事前情報ほどの極甘ではなく、甘みは強いですがコクのある甘さで後味がすっきりというか意外とぺろりと食べれちゃいました。アーモンドエッセンスは入っていないのかな?という感じであまり香りませんでした。

添えたれたカスタードも温かいうちにお見本のようにかけて食べてみます。

ちなみにイギリスのカスタードは日本のいわゆるカスタードクリームのように濃厚な味ではなく、甘さ控えめでさらりとしているのが特徴です。菓子自体が甘いのでその分甘さを抑えたカスタードやクリームを合わせると味の調和が取れるという感じです。

パイのサクサク感とフィリングの色々な甘みがミックスしたコクを感じる甘さに、さらりとしたカスタードのコンビネーションが美味しかったです♪

なるほど、これがベイクウェルプディングか!今まで食べたことのあるベイクウェルタルトとは別物のお菓子だ!

店内の工房で焼き立てのプディングたちと Mrs.Greaves像??

あー美味しかったなー!とB&Bに戻ったその晩、
先ほど食べてきたお店のHPを復習がてらに見ていたら、
アレ!??となったのです。

私がさっき食べたやつとビジュアルが違う。。。(→HPのベイクウェルプディング写真こちら

え?!なんで??

これはまさかの大きさの違い…!?
小さめに焼くのと大きめに焼くのではテクスチャーが変わってしまうことがよくあります。
あとは提供時に温め直しで変化してしまったのか、その日のシェフの気まぐれか。

ということで、

他3店のベイクウェルプディング + The Old Original Bakewell Pudding Shop をもう一度大きめサイズで食べ比べます!

①The Bakewell Pudding Parlour
  くねくねとうねったパイの形が特徴的
②Bloomers of Bakewell
  こちらも元祖と名乗るお店の一つ
③The Bakewell Tart Shop
  他と比べて一番厚みがある
④The Old Original Bakewell Pudding Shop
  一人じゃ食べ切れないぜ!大きめサイズ!

半分に切ってみました。
四者四様です。それそれ個性があって全く異なります。

そして、The Old Original Bakewell Pudding Shopの物も昨日食べたやつと見た目が異なります。

私とこんなマニアックなプディング食べ比べに付き合ってくれた友人との意見を綴ります。
あくまで個人の意見です。

① The Bakewell Pudding Parlour

色からして判断できる卵の多さ、見た目通り卵黄の濃厚さが強い。
ラズベリージャムを使っていて、甘酸っぱさと香りが良い。ほんのりとアーモンドエッセンスの香り。
パイはかなり厚めで湿気ってしまっている。

② Bloomers of Bakewell
パイは塩味が効いていて、ちょっと湿気ってしまっている。
フィリングはスポンジに近いくらいのケーキっぽい食感の重めのアーモンド生地で卵の良い香りがする。苺ジャムがはっきりと分かる。
なによりもアーモンドエッセンスの香りがとても強い。

③ The Bakewell Tart Shop
こちらは表のシールに店名が記載されているけれど、裏の食品表示シールには他店のベーカリーの名前が書いてあったので、こちらで焼いているものではないかもしれません。
パイがザクザクとしてよく焼かれていて美味しい。
フィリングがとってもしっとり柔らかでプリンのよう。卵の香りを感じ、アーモンドエッセンスはあまり感じない。ラズベリージャムが入ってるようだけど溶け込んでしまっている。甘さが一番強い。

④The Old Original Bakewell Pudding Shop
昨日食べたものよりパイが湿気っている。
フィリングがプリンのよう。なめらかでとろりとした口当たり。甘さも小さめサイズよりも強く感じ、アーモンドエッセンスがほのかに香る。苺ジャムもちゃんと分かる。
大雑把に表現して甘さの強いカスタードパイのような感じ。


すべて買った当日に食べてはいますが、持ち帰りでレンチンして試食していますのでパイのサクサク感はイートインで食べるものより劣っている可能性があります。可能性はありますが、明らかに商品がフレッシュではないお店がありました。
B&Bの店主さんが一番おいしい店とThe Old Original Bakewell Pudding Shopを勧めていた理由も味がというだけでなく、ちゃんと焼きたてを提供している、他のお店のは明らかに古いものがあるといっていた言葉そのものでした。

そしてどれが一番美味しいのか?というと、
4つとも違いすぎて好みによる!という感じではあります。
個人的にはトータルのバランスで④番が好みかなと思います。
昔から作られているような素朴さも感じて良いです。

偉そうに食べ比べなんぞいたしましたが、みんな違っておいしかった!そしておもしろい!
と、満足げにベイクウェルの町から旅立ちました。

そして、離れてから気が付きました。
歴史に書かれていたそれこそ元祖であろうはずのThe Rutland Arms Hotelのプディングを食べてくるのを忘れたことに。
心残りができてしまいました…
ベイクウェルプディング研究、まだまだ完結ならず。

ちなみに、
「ベイクウェル・プディング」と「ベイクウェル・タルト」の違いですが、

The Old Original Bakewell Pudding Shop のベイクウェルタルト
アーモンドエッセンスの香りが強い

≪ ベイクウェル・プディング ≫
土台がパフペイストリー(何層にもなった一番手間のかかるパイ生地)
苺またはラズベリージャムを敷き、アーモンドカスタードを流して焼いたもの

≪ ベイクウェル・タルト ≫
土台がショートクラストペイストリー(一番手軽であまり膨らまないパイ生地)
苺またはラズベリージャムを敷き、アーモンドスポンジを流して焼いたもの

土台のパイ生地の違いとフィリングの硬さが違います。
プリンぽいかケーキぽいかという感じ。
個人的にはタルトの方がもれなくアーモンドエッセンスを多めに使われている印象です。
そしてタルトはアーモンドスライスをのせて焼いただけのシンプルタイプと、仕上げにたっぷりのアイシングをかけてチェリーもトッピングしたりする甘々タイプがあります。

プディング食べ比べ中、紅茶と一緒に


今回の旅の一番の目的が終了いたしました。

ベイクウェルプディング
ずっと食べてみたいと思っていたお菓子であり、自分で作ってみてどのようなものかわかる菓子でもない印象でしたので現地で本物を食べられたことは本当に嬉しかったです。
現地では様々な味わいで親しまれていました。


イギリス菓子を勉強していくと思うのですが、
これが伝統だから、これが本物の味だから、という決定をすることが難しいと感じます。
基本とされるようなものがあっても、作り手が変わると全く変わってしまう。
しかもそれは悪いことではありません。
どう生まれ、作られていき、親しまれているか。
今回のベイクウェルプディングがまさにそうだなぁと。
イギリス菓子の代名詞的なスコーンにしても根本的に家庭菓子であることから同じ名前でもそれぞれの家庭や店の味があり様々に変化していって親しまれています。
それを楽しむのもまた面白いなと思います。

自分はイギリス菓子を作るにあたって、本を読み解いたり、現地で食べ歩いたりして基本や伝統を大切にして菓子作りをしていきたいと考えていますが、今回の旅での体験、イギリスで感じてきたことを盛り込める菓子作りをしていきたいなと改めて思いました。


ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます☺︎

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