Bannock * バノック

『Bannock』
スコットランドの伝統的な平べったいパンです。
地方や祭事に合わせて様々なバリエーションがあるようです。
おそらく一番古く一番シンプルなものは、Bere(発音は‘bear’と読むらしい)というスコットランドのオークニーで栽培される大麦や、オーツ麦、エンドウ豆など穀物を挽いた粉と、塩、水またはバターミルクを混ぜたものをグリドルという鉄板で焼いたもので、ブレッドといってもパン種を使わないクイックブレッドの仲間です。

今回バノックについて書いた理由は、
イギリスから持って帰ってきたレシピ本に載っている
「Pitcaithly Bannock」
というお菓子が気になったからです。

Pitcaithly Bannock
ピット…キャッシー??…バノック?

読めない!!!

名前だけではどんなお菓子かさっぱりです。
作り方を見てみると、ショートブレッドにとても近いです。
ですが、ShortbreadともBiscuitでもなく、Bannockと。
バノックとはなんぞや?
と色々を調べているうちに、最初に記述したものであることが分かりました。

私が持っている本によると、
初期のバノックは穀物の粉と水やバターミルクで作った生地を残り火にくべて焼き、食べる前にグリドルで焼き直していたと書かれています。
これは…長野のおやきに通ずるものがある!
きっとこれもおいしいに違いない!

ということで、バノックを知るために
一番シンプルな穀物のBannock
スコットランドで一番有名な Selkirk Bannock
そして私が気になっている Pitcaithly Bannock
3種類のバノックを作ってみたいと思います。

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まずは一番シンプルなバノックからです。


ベア大麦など貴重なものはもちろん手に入らないので、いつも常備しているオーツ麦をフードプロセッサーで粉にしました。
今では膨張剤を入れることもあるようなので、参考にしたレシピに沿って重曹とクレームタータ、塩を加えました。
そこに牛乳にレモン汁を加えた代用バターミルクを加えて生地を作ります。
捏ねたりはせずに木のスプーンでぐるぐる混ぜればよいだけの様ですが、
牛乳を加えた後の生地がまるで粥のようにどろどろねっとりです。
様子を見ながら加えればよかった!
ぐるぐる混ぜているうちにオートミールのように徐々に水分を吸ってなんとなくまとまりそうな状態になってきました。

厚さ1センチほどの円盤状にして、十字の切り込みを入れて焼きます。
もちろんグリドルなんぞ持っておりませんので、フライパンで!
弱めの中火で5分づつくらい、焼いている間にとってもいい匂いがします!
お米が炊ける時のあのたまらない香りの様な、穀物の香ばしくて甘い香り!
表面は美味しそうな焼き色が付きましたが、中がまだ生っぽく見える感じです。

「Oat Bannock」
完成です!

心配していた生っぽさですが、ちゃんと火が通っていました。
油脂も卵も入っていないのでゴソゴソとして粉臭いのかなぁとも思いましたが、しっとりしていてほろほろ食感で、穀物の良い香りとうまみたっぷりです。
個人的にとても好きです。

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続きまして、
「Selkirk Bannock」を作ります。

セルカークバノック
こちらは先ほど作った伝統的なバノックとは異なり、
イーストを使用し、砂糖も入り、レーズンもたっぷり!
スコットランドのSelkirkという町の名物でフルーツケーキと言われるほどのリッチなバノックです。

レシピはBBCのものを参考にして作ってみます。
私は普段はパンは作らないので、失敗覚悟のチャレンジです。

強力粉に溶かしバターと予備発酵させたイーストを加えて滑らかになるまでよく捏ねます。
一次発酵させて、砂糖とレーズンをたっぷりと!
二次発酵させて焼き上げます。

焼き上がりました。

捏ねている段階から、水分が少なめだなと思っていましたが、
焼き上った表面はカッチカチです。
なかなかしっかりしています。
カットすると中はふかふかです♪
そして、レーズンがまんべんなく生地に混ざっておりません!技術不足!ご勘弁を!
外がカチカチ気味なのはこれも私の技術不足なのか、そういうものなのか。
スコットランドのパン屋さんの本場の写真を見ると外も中もふかふかと柔らかそうなので、出来は今一つという感じでしょうか。
本物を食べたことないのが悔やまれます。

とりあえず、こちらの味は卵を使っていないこともあり、普通のレーズンパンよりもあっさりしています。
ティーブレッドのようにスライスしたものをトーストしてバターを添えて紅茶と一緒に食べたら最高だろうなぁという感じです♪
BBCレシピにブレッド&バタープディングにするのもお勧めと書いてあるのですが、柔らかすぎないのでカスタードにつけても溶けてしまわないし、あっさりめな味わいなので出来上がりが重くなりすぎずに、これで作ったら確かにおいしそうだなと思います。試してみたい♪

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最後は一番の目的、
「Pitcaithly Bannock」 へ参ります!
私が持っているレシピ本の指示通りに作ります。

柔らかいバターと砂糖を手でよく混ぜます。
そこへ小麦粉、オレンジピールとアーモンドを加えて手で混ぜます。
そして20センチの円になるように手で整えてオーブンで焼きます。

お菓子作りをしたことがある方ならお分かりかと思います。
クッキーは、バターと砂糖をホイッパーで白っぽくクリーム状に、ゴムベラに持ち替えて小麦粉を捏ねないようにさっくりと、麺棒で伸ばしてクッキー型で型を抜きます♪
なーんて、そんな現在のお菓子作りの基本とされることなど関係ない!すべて手で行います!手さえあればよし!

焼き上がりました♪
Pitcaithly Bannock 完成です

味はさくさくほろほろ!アーモンドの香ばしさとオレンジの爽やかさ、
ほぼショートブレッドです。
配合的には基本のショートブレッドよりの小麦粉の配合が多いので気持ちあっさりめで素朴感があります。
すべて手でやってのけたとは思えないほど美味しいです!

そうなると色々な道具なんていらないのかもなぁと思ったりもしますが、
手は生きています、温かいのです。そのためスピード感をもって作らないとバターがどんどん溶けていってしまうので、無理せず道具があるならそちらを使った方が確実かもしれません。

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三種類のバノックが揃いました!
オールドファッションな Oat Bannock
フカフカでリッチな Selkirk Bannock
ザクザク素朴な Pitcaithly Bannock

同じバノックと名がついていても三者三様、それぞれの良さと美味しさがあって本当に面白いです。
まだまだ種類はたくさんあるようなので、ぜひともスコットランドへ飛んでバノック旅したいです。

ということで、最後に作ったPitcaithly Bannock
今度お店の方でお出ししたいなと思っています。
3種食べ比べセットも楽しそうですが、自信をもってご提供するには私の修業が必要なので、ほかのバノックたちはまたの機会に♪



おまけで、
一番素朴なOat Bannock をランチプレートにしてみました。

サラダとハムとチェダーチーズ、そしてバターを添えたバノックのコールドディッシュプレートです。
こちらは焼きたてではなく翌日に食べたのですが、一日置くと水分が全体に回って塩気も和らいでバランスが整った感じがして個人的には焼きたてよりも翌日のほうが好みでした。
バノックを横半分にしてバターを塗って食べてもおいしいし、オープンサンドみたいに好みの具をのせて食べても最高でした。
独特のもそもそ食感が嫌いでなければ、これはいいです!
簡単に作れて、普通のパンに比べれば低GIで食物繊維豊富、新たな主食として最高じゃないでしょうか♪


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